2024年4月、日本銀行と関係府省庁が「CBDC(中央銀行デジタル通貨)に関する中間整理」を公表した。これを受け、元地方創生担当大臣・自民党金融調査会会長の 山本幸三 氏 が、Facebook にて「CBDCと暗号技術の根本課題」に関する見解を示した。
本稿では、山本氏の投稿内容を基に、
・CBDCの方式選択(トークン型と台帳型)
・暗号技術の本質的な課題
・安全性の確保に必要な視点
を整理する。
■ 中間整理が示した論点と、山本氏の問題意識
山本氏は、自身が自民党金融調査会長としてCBDC検討を指示した経緯に触れつつ、現在の国内状況を次のように整理する。
- キャッシュレス決済が拡大し、巨大プラットフォーマーが通貨主権を揺るがす可能性
- ◯◯ペイが乱立しているにもかかわらず、相互接続の仕組みが整っていない
- デジタル通貨に関する国際的な基準作りで、日本が後れを取るリスク
今回の中間整理については一定の評価をしながらも、
最も重要となる技術方式の選択が曖昧なままである点 を懸念している。
■ CBDCの方式選択:トークン型か、台帳型か
山本氏が強調するのは、CBDCはどの方式で実装すべきか という根本的な論点だ。
● 台帳型(ブロックチェーン方式)への懸念
- 一般的なデータベースよりも 圧倒的に大きな計算資源が必要
- 取引処理性能が低く、大規模リテール決済には向かない
- 障害発生時の再処理が複雑で、国家基幹系に必要な安定性を確保しづらい
この点から、山本氏は 台帳型(ブロックチェーン)では国家基盤として成立しない と指摘する。
● 現金決済の本質は「台帳に依存しないこと」
現金は、
受け渡しだけで決済が完結する“即時・確定・シンプル”な仕組み
であり、台帳参照を必要としない。
山本氏は、
「CBDCは現金の本質を継承すべきであり、トークン型が望ましい」
と明確に述べている。
■ 暗号技術の核心──「鍵配送問題」と“安全性の本質”
山本氏は、CBDC議論で十分扱われていないテーマとして 暗号技術そのものの安全性 を挙げている。
● 暗号は歴史的に“破られてきた”
- 日本の戦時暗号は米軍に解読されていた
- 旧ソ連の暗号も多くが解析されていたとされる
つまり暗号は「破られ続けてきた技術」であり、対策の本質を見誤ると致命的な結果を招く。
● シャノンが示した「情報理論的に安全な暗号」
MIT のクロード・シャノンが1949年に示した
ワンタイムパッド(OTP) は、数学的に解読不可能と証明された方式だ。
ただし以下の厳しい条件があり、実装が困難とされてきた。
- 平文と同等以上の長さの鍵が必要
- 完全ランダムで一度限りの使用
- 鍵を送受信者に安全に配送しなければならない
この“鍵配送”こそが、現代暗号の最大の弱点と山本氏は整理する。
● 公開鍵方式も「中間者攻撃」の構造的弱点を持つ
現在のインターネットは公開鍵方式に依存しているが、
第三者が通信経路に介入する中間者攻撃(MITM)を本質的に排除できない
という構造的問題がある。
■ 鍵を配送しない新アプローチ──「遠隔非同時同期」
山本氏が示した重要な視点は、
「完全に安全なのは、鍵を配送しないこと」
という単純で本質的な結論だ。
これを実現する仕組みとして、
遠隔非同時同期(Remote Asynchronous Synchronization)
の概念を挙げている。
送受信者が物理的に離れていても、同じ鍵を同期生成できるなら
配送経路そのものが不要になる。
山本氏は、
「これを実現した日本のベンチャーがある」
とだけ言及しており、具体名は示していない。
■ 結論:CBDCは国家基盤──技術選択を誤ってはならない
山本氏は最後に、CBDCは国家の基幹インフラである以上、
安全性・安定性・確実性が絶対条件
であると強調する。
特に、
- 実績の乏しい技術への過度な依存
- 取引処理性能や障害耐性の不足
- 暗号技術の本質的弱点への無理解
こうした“技術選択の誤り”が重大なリスクにつながると警鐘を鳴らしている。
そして、
「CBDCは現金の本質を継承したトークン型であるべき」
という立場を明確に示し、投稿を締めくくっている。
※本記事は、当社顧問・山本幸三氏によるFacebook投稿内容を基に構成しています。




